投稿日:2025年10月14日  最終更新日:2025年10月14日

みなさんこんにちは!英会話パーキースタッフです。

絵画や音楽、文学にふれると、心が豊かになりますよね。実は、私たちがよく知っている名作の多くは、日本人に親しみが持ちやすい言い回しになるように邦題が付けられています。
今回は、日本で親しまれている4つの名作を「英語タイトル」で見ながら、文法的にも楽しく味わってみましょう!

『星月夜』 ― The Starry Night 

フィンセント・ファン・ゴッホが描いた傑作『星月夜』。ゴッホの作品のなかでも、『ひまわり』と並び、高い人気を誇る名画です。

英語で The Starry Night。“starry” は「星の」という形容詞で、“star” に “-y” をつけて「〜の多い」という意味に変えています。“snowy day(雪の日)” や “rainy afternoon(雨の午後)” と同じ形です。

“night” は名詞なので、タイトル全体で「星の多い夜」という意味になります。
「星空の夜」という意味合いですが、“starry” には「きらめくように美しい」という感情的なニュアンスも含まれるので、ゴッホが見上げた空の感動まで伝わる、まさに詩的なタイトルです。

『最後の晩餐』 ― The Last Supper

レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作ともいえる『最後の晩餐』は、英語では The Last Supper。 “supper” は「夕食」という意味の名詞で、“dinner” より少し家庭的・宗教的な響きがあります。
“last” は形容詞で「最後の」という意味、つまり直訳で「最後の夕食」となります。

『最後の夕食』ではなく、『最後の晩餐』と訳されているのは、英語では“the”がついているのが重要で、「唯一の」「あの有名な」という意味を持たせています。
もし “Last Supper” とだけ言うと、「最後の夕食というテーマの何か」くらいのぼんやりした印象になってしまいます。定冠詞「 the」の使い方ひとつで、特別な場面を強調できるのが英語タイトルの面白いところです。

『叫び』 ― The Scream

エドヴァルド・ムンクの代名詞といえば『叫び』ですが、英題は『The Scream』。英語では動詞を名詞化してタイトルにすることがよくあり、叫びもそのパターンで名前が付けられています。

“scream” は「叫ぶ」という動詞でもあり、「叫び」という名詞にもなります。The Last Supperと同じように“the” をつけることで「たった一度の叫び」「象徴的な叫び」という意味を強調するようになります。シンプルなのに強烈な印象を与えるのは、この冠詞と名詞化の効果とも言えます。

『神奈川沖浪裏』 ― The Great Wave off Kanagawa

最後は逆に日本の作品につけられた英語名を紹介します。

葛飾北斎の浮世絵は、海外では The Great Wave off Kanagawa と呼ばれています。“great” は「偉大な」よりも「大きくて迫力がある」という意味で、wave” は「波」、そして “off Kanagawa” は「神奈川の沖で」という場所を表しています。

“off” は「〜の沖に」「〜から離れて」という前置詞で地理的な位置関係を表していて、英語表現ではよく使われます。

take off(離陸する)=地面から離れる
turn off(電源を切る)=スイッチの位置から離す
go off(爆発する)=静かな状態から離れて動き出す

このタイトルを直訳すると「神奈川の沖の大波」。
英語では説明的というよりも、力強い一瞬を切り取ったような感覚を与える言い方になっています。

もし『of』だとしたら、「所属・所有」のニュアンスなので、「神奈川に属する波」になってしまい、場所を示すというより「神奈川のもの」といった所有の関係になります。

一方、“off” は「地理的な位置関係」を表すので、「〜の沖にある」という空間的な距離感を正確に伝えることができます。北斎が書いたのは「神奈川という陸地の沖合に立ち上がる波」なので、offのほうがニュアンス的に正しくなります。

いかがでしたか?英語の作品タイトルには、文法のルールとともに「感情をどう伝えるか」というセンスが隠れています。

形容詞で情景を描いたり、冠詞で特別さを出したり、日本語では同じ単語でも、英語では組み合わせ次第で印象がまったく変わります。
もし自分の好きな西洋絵画に邦題がついているのであれば、原題を知ることで“作者や世界に通じるタイトル”を味わってみませんか?